大江健三郎が好きです。なのでその著作の多くを単行本で所持していますが、文庫が出たらそれはそれで買います。好きなので。

大江健三郎の文庫、略してオーブン。ここ数年は講談社がせっせと文庫化しているようです。で、今回は、最近でている文庫の表紙がすさまじい、というお話です。

講談社文庫の大江が全部すさまじいわけではないんです。
『M/Tと森のフシギな物語』からすさまじくなります。この小説は、大江健三郎が祖母から聞いたという四国の森に伝わる物語と大江健三郎のグロテスクな想像力がミックスされた壮大かつへんてこりんなすばらしい作品なのですが、それはさておき表紙が。表紙が。

それではみなさま、まずはこちらをご覧ください。
M/Tと森のフシギの物語 (講談社文庫)
M/Tと森のフシギの物語 (講談社文庫)
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M/Tと書いてあるのがご確認いただけるかとおもいます。タイトルですね、わかります。いや、わからない。最初に手にしたときに、かなり違和感を感じたのですが、その時点ではこれ1冊だけだったので、そんなもんなのか〜、と。

次に出たのが、『キルプの軍団』です。これは、マイベスト大江10に入るくらい好きな作品なのですが、それはさておき、やっぱり表紙が おかあさん表紙が
キルプの軍団 (講談社文庫)
キルプの軍団 (講談社文庫)
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ちょっと変だと思いませんか?っていうかかなり変。変だよ!あるイラストレーターの方が「Quilpという開発言語があるみたいだ」と評されていました。うまい。

で、その次に出たのが『治療塔』。これは、大江初のSF作品でして、SF好きなんだけど文学よりみたいな私にぴったりのSF、SF・・・アッ、
治療塔 (講談社文庫)
治療塔 (講談社文庫)
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SFって書いてある!!!これならおかあさんも間違えない!

どんどんいきましょう。『治療塔』の続編である『治療塔惑星』。ジャ〜ン。えすえふぅぅ〜(ドラえもん風に
治療塔惑星 (講談社文庫)
治療塔惑星 (講談社文庫)
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この本はきっとSFだな・・・そうおもわせてやまない装丁です。

で、これが現在のところの最新版『さようなら、私の本よ!』です。sayonaraって書いてあります。
さようなら、私の本よ! (講談社文庫)
さようなら、私の本よ! (講談社文庫)
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一連の表紙のすさまじさについては、あまり話題になってないみたいです。表紙以前に大江健三郎作品の文庫化って事実自体があまり話題になってないというかなりようがないというだけのことでしょう。それでもやはり変だと思うのでこんなところで書いてます。お世話になります。エビマユです。

この装丁を手がけている司修という方について。
ちょっと文化ちっくな上司いわく「司修って美人画書くと地味なんだよ。デジタルだとこうなるのね。イラレ入門者が作ったグラデーションみたい 」

なんかわかったようなわかんないような寸評です。ちょっと興味を持った方はググってみてください司修。ググってないでしょ。ええとですね、この方は大江健三郎作品の装丁をずっと担当されているようなのです。しかも、装丁だけでなく、ご自身も詩に小説に、多彩な活動を展開されているようなのです。

知らんかった〜
変な表紙みるまで知らんかった〜

過去の大江作品、単行本の装丁を何点か確認してみました。あの、コンピューターを使わなければ、普通・・・普通っていっちゃアレかな。でもなんていうか、普通の装丁なんですよ。アレらのアレは、コンピューター、おそらくイラレを駆使した結果のアレであると。

また、せっかくなので司修氏の著作、講談社文芸文庫(高級な講談社文庫)の『影について』を購入。

影について (講談社文芸文庫)影について (講談社文芸文庫)
著者:司 修
販売元:講談社
発売日:2008-01-10
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こっちの装丁は普通じゃん!という突っ込みはさておき、これがね、けっこういいんですよ。でもそれを書くと長くなるのでそれはまた次の機会に。あ、でもこれだけ・・・巻末にある年譜によりますと、
1994年(平成6年) 五八歳
コンピューターによる絵画模索続く。

なんだか素敵です。模索ですよ。アレらのアレは習作なんですよ、きっと。大物だし、編集者も文句が言えないんです、きっと。

そんな背景があったかもしらんなかったかもしらん、とにかく明らかにおかしなこれらの装丁について大江健三郎はどうおもうのでしょう?

大江健三郎のここ数年の仕事。
『取り替え子』『憂い顔の童子』『さようなら、私の本よ!』は、「おかしな二人組(スゥード・カップル)」三部作としてまとめられています。彼はこの三部作をエドワード・サイードいうところの「後期の仕事(レイター・ワーク)」と位置づけています。

「後期の仕事」については、サイードの『晩年のスタイル』(岩波書店)に詳しいですが、30字以内にまとめますと、晩年を迎えた芸術家がそれまでとはまったく違うスタイルで表現をするという、それも、いわゆる円熟といった穏やかなものではなく、むしろ混沌と狂気、破滅へ向かうわけのわからないものであーる!といった話だったかとおもいます。ネガティブ老人力。ろうそくの炎が消える間際、最も美しく輝くはずの炎が大爆発→むくり→あー死ぬかと思った(アフロで)→おじいちゃん、また徘徊して→朝飯ならまだ食っとらん→といった話だったかとおもいます。いやちがう。

それでは、以下に、小説の中で大江が引用しているエリオットの詩を引用しましょう

もう老人の知恵などは聞きたくない、
むしろ老人の愚行が聞きたい
不安と狂気に対する老人の恐怖心が


−T・S・エリオット、西脇順三郎訳


(シーン)

さて。
私は何の話をしていましたか。
そうそう、司修。

司修の講談社文庫の装丁は彼の「後期の仕事」である、と大江健三郎は考えている、のではないかと私は考えている、次第です。「おかしな二人組」三部作の文庫化において、大江×司もまた「おかしな二人組」であるという、いわゆるひとつの

だからもう、アレでいいんです。いいんです。だからもう、誰も何もいわないで!ブログに書いたりしないで!


晩年のスタイル晩年のスタイル
著者:エドワード W.サイード
販売元:岩波書店
発売日:2007-09
おすすめ度:4.0
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いま気づいたけど、この表紙もすごいな。